当社の「青のり」は昔からほとんどデザインを変えておらず、お客様の間でも非常に認知度の高い商品です。
その特徴は香り豊かな国産の「すじ青のり」を100%使用していること、これに尽きます。
口当たりも滑らかで食感が良く、お好み焼きやたこ焼きなどに使用すると、大変美味しくお召し上がりいただけます。
そんな「すじ青のり」ですが、2017年頃からの数年間、記録的な不漁に悩まされたことがあります。原因は地球温暖化による海水温の変化や栄養不足等が挙げられていますが、特定はされていません。
もちろん、これは当社の「青のり」にとっては大打撃でした。2020年6月には商品の一時休売(約1年4ヵ月間)に踏み切ったほどで、当時は研究所でも連日対応策を議論していたのを覚えています。
そこで当社は、かねてより行っていた「すじ青のりの陸上養殖」の収穫量を増やすべく、広島県福山市に新しく養殖施設を建造する計画を2020年にスタートさせました。
それが私が勤めている、「走島海洋資源開発センター」です。
走島(はしりじま)は瀬戸内海に浮かぶ有人島で、面積約2平方キロメートルの小さな島です。
島でのセンター建設は予想通り大変で、中でも水の確保にはとても苦労しました。
すじ青のりの養殖にとって水は最も重要な要素で、十分な水量が必要となるため、当センターでは井戸を数か所掘って地下海水を汲み上げて使用しています。この時、地下海水に含まれるマンガンの数値が低いことがすじ青のりの生育には大事なのですが、掘った井戸から出る水が中々望む基準に達せず、いつも祈りながら掘削を見守っていましたね。
掘る深さや場所を変えたりして色々試行錯誤した結果、やっとのことで良質な水資源を確保することができました。
一方で社屋の建築は順調に進んでおり、養殖タンクも室戸海洋資源開発センターを超える数が設置されました。
規則正しく並ぶ円形のタンク群を見た時は、何とも言えない感慨深さを感じましたね。
私自身、大学ですじ青のりの養殖を学んでいたこともあり、ノウハウは持っているつもりでした。
しかし、環境が変わると中々思い通りにいかないもので、最初は満足いく生育状況に至りませんでした。
気温が変われば水温も変わりますし、水の成分だって海域によって異なります。
スタッフや研究所の先輩と意見を交わしながら、ああでもない、こうでもないとテストを繰り返しました。
「全体的に色が薄いから肥料を変えてみよう」とか「夏場は外気温が高いから、高水温に耐性のある品種を試してみよう」とか、本当にもう手探りな感じでしたね。
苦労も多かったですが、推測がピタリとはまった時は大きな達成感を得ることができたと思います。
すじ青のりの生育は早く、およそ2~3ヵ月ほどで収穫時期を迎えます。
タンクの中で水流にたなびくすじ青のりはとても綺麗で、太陽の光で宝石のように輝いて見えます。
「これを自分達の手で作ったんだ」という実感が湧くと共に、更なる品質向上に向けて頑張ろうという気持ちになりました。
走島で初収穫されたすじ青のりは、「青のり」の原料として本社工場へ送られ、無事に食卓の皆様の元へ届けられました。
フワリと香る走島の海の香りをお客様にお届けできたことを、誇りに思っています。
入社時からすじ青のりの研究を希望していた私にとって、走島での日々は毎日が勉強そのもので、とてもやりがいを感じています。
海藻の分野は本当に奥が深くて、すじ青のりの陸上養殖は2000年ごろに誕生し、ここ10年で普及し始めた新しい養殖方法なのです。その為、まだまだわかっていないことが多くあります。
そういった未知の多い分野を自分自身の手で切り開いていくことは、まさに研究の醍醐味だと思います。
大学で学んだ知識が現実ではうまくいかない事もあります。そんな時に自分で創意工夫し、壁を突破できた時の達成感は何ものにも代えられません。
これから三島食品に入社を考えている学生の皆さんも、仕事を通して貴重な経験をどんどんしていって欲しいですね。
それは三島食品にとってだけでなく、皆さんの人生にとってもかけがえのない学びになることと思います。
ぜひ、皆さんのエントリーを心よりお待ちしております。